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上顎洞底挙上術とは?ソケットリフトとサイナスリフトの違いも解説

上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょじょうじゅつ)は、歯科クリニックでインプラントの相談をしたときに歯科医師から提案を受けることがあります。上顎洞底挙上術と聞いても何をするかもわからないし、本当に必要なのかも判断できないですよね。この記事では上顎洞底挙上術の目的と、代表的な術式のソケットリフトとサイナスリフトの違いを紹介します。それぞれの術式の違いを知り、正しい知識を付けて手術を受けるべきかどうかを考えてみてください。

上顎洞底挙上術とは

上顎洞底挙上術は、上顎のインプラント手術を行う際に骨量が不足しているときに適用される手術です。この手術では、骨補填材を「上顎洞」と呼ばれる副鼻腔の1つに埋め込むことで、インプラント手術に必要な骨の厚みを確保します。これは骨造成手術の一つで、一般的には骨の厚みが10mm以上ある場合、インプラントが直接埋め込めるため上顎洞底挙上術を実施する必要はありません。しかし、インプラント手術に十分な骨の高さが確保できない場合、上顎洞の底部に存在するシュナイダー膜をリフトアップする手法を用いて骨造成を行い、手術が可能な状態を作ります。

上顎洞底挙上術は原則として保険適用外

上顎洞底挙上術はインプラント手術の一環としておこなわれます。インプラントと同様に原則として保険適用外の自由診療です。ただ、先天的な形成不全があるときや、腫瘍や顎骨骨髄炎、事故や外傷などによって顎の骨の1/3以上が連続して欠損しているケースなどはインプラントが保険適用になります。

上顎洞底挙上術の術式の種類

上顎洞底挙上術にはソケットリフトとサイナスリフトの2種類があります。ソケットリフトとサイナスリフトは、どちらも上顎洞に空間を確保して骨造成をする点では同じです。術式として大きく異なるのは、骨形成のために入れる骨補填材の入れ方です。

ソケットリフトは、インプラントを埋入させるために空けた穴から骨補填材を入れます。一方サイナスリフトでは上顎の側面から穴を空けて骨補填材を入れ、リフトアップをします。ソケットリフトは軽度な改善で十分なときに手術負担を軽減する目的で選ばれます。骨の厚みがなくてソケットリフトで対応できないときには、サイナスリフトを選ぶのが一般的です。

ソケットリフトとサイナスリフトの違いを比較

歯科クリニックでインプラントの相談をしたときには、歯科医師から手術内容の説明を受けます。その内容に納得すれば治療を依頼するというのが通常の流れです。また、もし上顎洞底挙上術が必要なときは、ソケットリフトとサイナスリフトのどちらにすべきか患者自身も考えることが大切です。ここでは上顎洞底挙上術の違いを比較して紹介します。

適用する症状

先に述べたように、上顎洞底挙上術は骨の厚みが足りなくてインプラントができないときに必要な手術です。症状によってソケットリフト、サイナスリフトどちらを適用すべきかが異なります。負担の少ないソケットリフトは少なくとも3mm以上、理想的には5mm以上の骨が残っていることが適用できる条件です。骨の厚みが足りない場合には、インプラントを成功させるためにサイナスリフトで確実性の高い上顎洞底挙上術をおこないます。

治療期間

上顎洞底挙上術の治療期間は、ソケットリフトとサイナスリフトで異なります。一般的にはソケットリフトでは3ヶ月程度、サイナスリフトでは6ヶ月程度の治療期間といわれています。ソケットリフトはインプラントのために空けた穴を使って骨補填材を入れられるので同時に手術ができますが、サイナスリフトでは別に手術をおこなうことが必要です。サイナスリフトの方が身体の負担が大きいため、その分治療期間も長くなっています。

治療費用

手術による治療が必要な点は、ソケットリフトもサイナスリフトも同じです。ただ、治療期間も手術の難しさも異なるため、同じ上顎洞底挙上術でも費用は異なります。上顎洞底挙上術にかかる費用は、インプラント費用の10%~50%くらいを占めます。

一般的な相場はソケットリフトの場合、8万円~20万円程度なのに対して、サイナスリフトでは15万円~40万円程度です。つまりサイナスリフトは、ソケットリフトの倍くらい費用が高いということになります。

この額はあくまで上顎洞底挙上術そのものにかかるものです。インプラントでは初診での問診から始まり、各種検査の実施などにも費用がかかります。インプラントで取り付ける上部構造の費用や、インプラント手術自体の費用も別途必要です。治療費用は総額で100万円前後になることが多くなっていますが、ソケットリフトかサイナスリフトかによって数万円~20万円くらいの違いがあります。

まとめ

上顎洞底挙上術は、上顎インプラント治療を行う際、骨の厚みが不足しているときに適用される骨造成手術です。骨がある程度残っている場合は、ソケットリフトを利用してインプラントと同時に手術することができます。一方、骨の厚みがほとんどないときには、サイナスリフトを採用し、時間と費用を投じて治療を進める必要があります。骨がまだ丈夫な段階であれば、上顎洞底挙上術をせずにインプラントができます。治療を検討中の方は、早めに歯科医師に相談することをおすすめします。

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